障害のある人と共に学ぶ・共に働くQ&A

このページには、障害のある人が学び働くことに関する基本的な知識をQ&A方式でまとめています。詳しくは各項目の【参考ページ】をご覧下さい。

日本に障害のある学生はどのくらいいますか?

2022年の日本学生支援機構の調査では、高等教育機関が把握している障害のある学生数は49,672名、全学生のうち障害のある学生の割合は、1.53%です。また障害学生(49,672名)のうち所属機関より支援を受けている学生の総数は、27,121名で、障害学生に占める支援障害学生の割合は54.6%です。ただしこれは大学等の高等教育機関が把握している障害学生の数なので、支援が必要ない場合や教育機関に伝えていない場合も含めると、障害のある学生数はこれよりも多いと考えられます。

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日本に障害のある医療系学生はどのくらいいますか?

2022年の調査で把握されている障害学生(49,672名)のうち、大学に在籍している障害学生数は44,448名です。そのうち、医学部と歯学部を合わせた「保健(医・歯学)」の障害学生数は901名(精神障害353名、病弱・虚弱287名、発達障害76名など)、医学部と歯学部以外の医療系学部「保健(医・歯を除く)」の障害学生数は4360名(病弱・虚弱1781名、精神障害1187名、発達障害366名など)です。また支援障害学生数に関しては、「保健(医・歯学)」が443名(支援率:49.2%)(精神障害251名、病弱・虚弱63名、発達障害51名など)、「保健(医・歯を除く)」が1865名(支援率42.8%)(精神障害700名、病弱・虚弱451名、発達障害243名など)です。

【参考ページ】

日本に障害のある医療者はどのくらいいますか?

障害のある医療者の全体像は分かっていませんが、2014~2016(速報値)および2016~2023年までに各医療者の業務を定めた法律の相対的欠格事由(心身の機能の障害)に該当する者に対する免許付与件数が公表されています。
これによるとこの期間、相対的欠格事由に該当して免許交付されなかったのは入院中で保留になっている1名のみです。またもちろん相対的欠格事由に当てはまらない方もいますし、免許取得後に障害をもつようになった医療者の方もおられます。「障害のある医療者のコミュニティ」のページには、当事者団体などを掲載しています。障害のある医療者の数とともに、そういった方々がどのように医療職として活躍されているか、この先も情報収集してきたいと思っています。

【参考ページ】

年度ごとの件数の計(身体+精神)は、下記のようになっています。
2014年 90件(12+78)
2015年 99件(22+77)※入院中のため申請のあった1名が保留
2016年 96件(19+77)
2017年 63件(18+45)
2018年 71件(16+55)
2019年 140件(28+112)
2020年 104件(17+87)
2021年 136件(20+116)
2022年 169件(18+151)
2023年 175件(24+151)

※出典元のページ:障害者欠格条項をなくす会「相対的欠格事由(心身の機能の障害)に該当する者に対する免許付与件数について(医政局管轄分)」

 

障害のある人の権利について教えて下さい。

障害のある人の権利は、日本が2014年に批准した「障害者権利条約」に定められています。この条約は、障害のある人の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための具体的な措置について定めています。例えば、「社会への完全かつ効果的な参加及び包容等」や、「合理的配慮の実施を怠ることを含めた差別の禁止」が含まれます。

2006年に国連の第8回特別委員会でこの条約が合意に達するまで、当事者から”Nothing about us without us”という言葉が幾度となく叫ばれました。日本語では「私達抜きで私達のことを決めないで」という言葉です。これ以降、障害者権利条約の合い言葉として、当事者と一緒に決めることが重視されてきました。
また障害者権利条約は、障害がその人自身にあるとする「医学モデル」を否定し、障害はその人と障害のない人を想定して作られている社会の相互作用によって生じているとする「社会モデル(相互作用モデル)」の考え方がベースになっています。

【参考ページ】

根拠となる法律はなんですか?

根拠となる法律は「障害者差別解消法」です。2016年に施行されたこの法律には、障害のある人に対する「差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が定められています。「合理的配慮の提供」に関しては、2016年の法律施行時に行政機関(国立大学等)は義務、事業者は努力義務でしたが、2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者(私立大学等)も義務になります。

【参考ページ】

大学が障害のある学生を受け入れるために参考になる資料はありますか?

文部科学省はこれまで2012年度及び2016年度に「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し、「第一次まとめ」として障害のある学生に対する修学支援の在り方と具体的な方策等について、「第二次まとめ」として障害者差別解消法を踏まえた不当な差別的取り扱いや合理的配慮の考え方等について、取りまとめています。

また、2024年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され私立大学でも障害のある人に対する合理的配慮の提供が義務化されたのに合わせて、これまでの課題を整理し、大学等が取り組むべき基本的な考え方について検討会が開催され、2024年3月に「障害のある学生の修学支援に関する検討会(第三次まとめ)」が公表されました。「第三次まとめ」には、大学等における障害学生支援の在り方や、「障害の社会モデル」の理解に関すること、障害者差別解消法上の大学等の義務と努力義務、障害の根拠資料に関する考え方、学内の教職員向け対応要領・ガイドライン等、障害のある学生の意思表明を促す取り組み等が書かれています。

【参考ページ】

さらに、2024年4月の改正障害者差別解消法の施行に合わせた「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」の改正に合わせ、2023年12月に「文部科学省所轄事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」を改正しています。

【参考ページ】

合理的配慮とはなんですか?その要件などがありますか?

行政機関等と事業者が、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面で、障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合にその実施に伴う負担が過重でないときに、社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずることです。合理的配慮は、以下の7つの要件で説明され合理的配慮は全てを満たすものになります。

  • 個別のニーズに基づくこと
  • 本人の意向を尊重すること
  • 社会的障壁の除去であること
  • 非過重負担であること
  • 本来業務に付随すること
  • 他の人との機会の平等がはかられていること
  • 業務の本質を変更しないこと

※上の3つは合理的配慮の「必要性」を表し、下の4つは「妥当性」を表します。

【参考ページ】

合理的配慮はどうやって決めていくのですか?

合理的配慮は、当事者がニーズを表明することがスタートになりますが、場合によっては障害のために困っている状況が明らかであれば、周囲から声をかけることがあるかもしれません。まず障害のある当事者の人が、学修や就労に関して障害のために配慮が必要な内容について、内容を表明をしていきます。根拠資料と申請書等を提出し、具体的な配慮の内容やそれが妥当であることについて、委員会等で「協議」を行います。機関や組織によって配慮を決めるためのプロセスは異なりますが、重要なのは、当事者と共に「建設的対話」を重ねながら決めていくことです。また、いったん配慮内容が決まって実際に配慮提供が行われた後は、提供者側と当事者が共に振り返りを行い、次に活かしていきます。

【参考ページ】

合理的配慮と教育的配慮は同じでしょうか?

教育的配慮は、各教職員の理念や善意に基づく工夫です。人によって考え方が異なります。一方で、合理的配慮は障害者差別解消法に基づいて行われるもので一定の要件があり(上記の項目参照)、機関として一貫して行われるものです。

【参考ページ】

合理的配慮とは、バリアフリーと同じでしょうか?

合理的配慮は特定の人の特定のニーズに合わせて「個別に」提供されるものです。一方で、バリアフリーはどんな人にとってもバリアがないようにすることです。予めバリアフリーにして、誰もが障害の有無に関係なく活動できるようにすることを「事前的改善措置」と言います。特定の人への合理的配慮を考える課程で、バリアフリーを目指したほうが全ての人が教育や就労の場で過ごしやすくなることはよくあります。

【参考ページ】

障害のある医療系学生や医療者に関する合理的配慮例にはどんなものがありますか?

合理的配慮の内容は、その人の機能障害と特定の場面の環境や資源等によって個別に考える必要があり、一律に決めることはできません。しかしいくつかの例をもとに具体的に考えていくことは可能です。(実際には唯一無二の正解はないので、合理的配慮の7要件を参照しながら、当事者との建設的対話を繰り返して決めていきます。)例えば、以下のような合理的配慮が考えられます。

  • 座学の授業:ICレコーダーでの録音や支援機器の利用、ノートテイクや手話通訳者など介助者が入るもの、また、授業資料の事前配付や動画に字幕をつけるなど、教材そのものへの工夫もあります。
  • 座学の試験:特別な機器の使用や試験時間の延長、別室受験、試験時間割の調整が考えられます。
  • 学内演習:使用機器の変更(例えば、採血の際に直針が使いにくければ、翼状針を使うなど)、介助者の使用、手順の変更
  • 実技試験:試験時間の延長、使用機器の変更、介助者の使用、手順の変更
  • 臨床実習:実習先の調整(通学しやすい場所にする、ローテーションのスケジュールを調整する)、開始時間の調整、介助者の使用、補助機器の使用、使用医療器具の変更、シミュレーションラボでの代替

※いずれも「合理的配慮」の7要件(別項参照)を全て満たす必要があります。当事者の希望をもとに十分な建設的対話が求められます。